きたる日に備えて – Her-Me

COLUMN

きたる日に備えて

2023年9月1日は関東大震災100年の節目とのことで、
テレビや雑誌では様々な特集が組まれていた。
その中で、これからの災害に私たちがどう備えておくべきかというテーマが
私の中でとても気になった。
災害で困るのは食事・電気・水・排泄など、、、
この豊かな時代で困ることを上げたらキリがない。
でも私が一番気になったのは排泄処理、トイレについて。

私は、膀胱が小さいのか、トイレが近い。トイレがないのは何よりも困る!
そんな私だから、備えておくべきこと特集の排泄関連は
目を皿のようにして読み込んだ。
箱型簡易トイレやビニール袋、簡易トイレ用のテントなど対策品は様々あったが、
私の選択はオムツと消臭加工の大きなビニール袋。

子供が小さい頃、旅行に行く時にオムツはスーツケースの大半を占め、
”邪魔”という文字が一瞬頭に浮かぶ、悩みの種ではあったが、
旅先では、その謂れのない汚名を晴らすべく、
子供の急な「かあさんトイレー」の叫びに、力を存分に発揮してくれた優れものだった。
オムツ買っておけば、何とかなるでしょう!その時は簡単に考え、即ドラッグストアへ。
介護用品売り場でCMでよく目にする商品をゲット。

でも、買っただけでは、きたる日に備えれてないのでは?
そう思った私は【ひとり災害対応訓練】を行うことを決断。
決行場所でまず思い浮かんだのは、キャンプ場。
キャンプ大好きな私ですが、夜のトイレが苦手。ここでトライを、と思ったのですが
キャンプという非日常的な状況で訓練を行うのは少し違うのではないかと考え
最終決行場所は、、、、

某月某日午前7時、東京行の新幹線に乗って出張に向かう私。
着けてますとも オ・ム・ツ♪ 
訓練なのに、心はバブバブ ウキウキ。  初めての事って訓練でも心躍るのです。
はい、この時点では、ウキウキでした。
もちろん、ウキウキしながら、
『この訓練は今後の様々な問題の解決につながる大切なミッションだ』なんて
バブバブ状態なりに、ゴルゴ様並みのキリっとした表情で、
ミッションをスタートしたのですが、
そんな簡単なものではないことに、この後気付きます。
人間には羞恥心というものがあり、人がざわざわいるところで、
そんなに簡単に用を足せれるものじゃない。

思い返せば、東南アジアに出かけた時に、トイレに連れて行ってもらうと、
そこは幅25cm、長さ15mくらいの溝があるだけの場所。
そこへ数人の女性がお尻を出して用を足している。私にとっては衝撃的な光景。 
初めての経験、でも、ここでしないと次はいつトイレがあるかわからない。
何分も掛けて、思い切って頑張って。
あの時、私の中ではトイレは命掛けの作業だった。

そんなことを思い出しながら、東京で商談をこなし、時は既に夕方。
朝から装着はしているものの、訓練は未だ実行出来ず。何度トイレに行ったでしょう。

訓練全然出来ない!!!心の中で焦り始めた私はその時、母の気持ちに繋がったんです。
数年前に病気になり、トイレには行けれるものの、
何かあった時の為にオムツをはくことになった母の気持ちに。

ある日、一緒に出掛けていた車の中で渋滞に合い、
その時に母がトイレに行きたいと言って、
最初は「少し待ってね」と優しく応えていたのに
何度も同じことを繰り返す母に、
「渋滞なんだから無理よ!オムツしてるんだから、そこにしたらいいじゃん」と
少しイラっとして言ったんです。
すると母が「そんなの無理よ。私だってトイレでしたいのよ」と。
その時の私、『じゃあ、オムツ履かなければいいのに』そんなことを思ってました。
それから少しして渋滞を抜け、母をトイレに連れて行けたことがありました。

いま、自分が訓練とはいえ、その状態になってみて、
母の気持ちに繋がって、母の気持ちが痛い程わかって
何てヒドイことをしたのかと情けなくなりました。
自分だって東南アジアで”命がけのトイレ”を経験していたのに、そんなことも忘れて、
母の気持ちに寄り添うことが出来ず、本当に恥ずかしくなりました。

【ひとり災害対応訓練】は、
人の尊厳、人への思いやりを考えさせられる時間となったのでした。
出張から戻って、その話を母にして、ごめんなさいと謝った時に、母は笑顔で、
「何歳になっても人として、そして親子でも恥ずかしい部分はあるよね。
わかってくれてうれしい」と言って許してくれました。
【ひとり災害対応訓練】は、
この先、母を介護するという”きたる日”に向けての学びの場にもなりました。


そうそう!この【ひとり災害対応訓練】ですが、一緒に出張に行ってた仲間達には
【訓練予定・実行】はお伝えしていませんでしたので、
この場を借りて ご報告させていただこうと思います。


『ひとり訓練の初期目的は失敗に終わりましたが、
 人の気持ちは少しわかる大人になれました。次回の訓練はご一緒に』

                                   
                                Megme