忘れられない服 – Her-Me

COLUMN

忘れられない服

いままでに買った服の中で、忘れられないもの、ありますか?

ピアノの発表会に出る時に買ってもらったキャメル色のワンピース
初めてのデートのために買ったレモン色のスカート
別れた彼とのペアのTシャツ。。。素敵な想い出、悲しい想い出

私の忘れられない服、それは小学校4年生の時の麻のショートパンツです。

その日は、おばあちゃんがお友達と演劇を観に行く日で
演劇好きではありませんでしたが、私もおばあちゃんについて行ったのです。

観劇後、祖母のお友達が服やアクセサリーを買いたいと百貨店に行きました。
その時にふと目についたのが、麻のベージュカラーのショートパンツ。
同色のベルトに小さなエッフェル塔や天使のチャームが付いていました。

普段は、洋裁の仕事をしている叔母が服を作ってくれることが多かったのですが
こんなことを言うと怒られますが、叔母が作ってくれる服は正統派過ぎて
そろそろオシャレに興味を持っていた私にとっては少しつまらなくて、
ゆらゆら揺れるチャームが付いているパンツに、心が揺さぶられたのでした♪

ちょうどその頃、山口百恵さんの【赤いシリーズ】というドラマが流行っていて
その一つのドラマの設定で、百恵さんのおばさまがパリに住んでいて
そのおばさまが上品で背筋をすっと伸ばしてパリの街を歩いているのを観ていて
”パリかぶれ”になっていた私は、
そのエッフェル塔の付いたショートパンツを履いたら
パリジェンヌになれるとでも思ったのか、何が何でも欲しくなってしまいました。

「これが欲しい!」と言った時の、祖母の顔がいまでも忘れられません。
そりゃそうですよね。
百貨店で、そんな素敵なチャームが付いた麻のショートパンツ
値札を見なくても、高いというのは想像がつきますよね。
「これは無理よ」祖母がはっきりとそう言ったのに
「絶対に欲しいの!!!」 既に試着室で履いて、脱ごうともせず言いました。
「欲しい!!!」

小学校を卒業するくらいまでの私は、両親にも祖母にも
そんなに無理難題を言うような子ではなかったのですが
その日はまったく引かず、
見かねた祖母の友人が「私が買ってあげる」という始末。。。
そんな状況になってしまうと、祖母も買うしかないと
「買ってあげるから、まず脱ぎなさい」諦め顔で私に言いました。

麻のショートパンツ
なぜ、私がこのパンツのことを忘れられないかというと
欲しいと言った時の祖母の驚いた顔
諦めて、買ってあげると言ってくれた時の寂しそうな顔
その時の祖母の二つの顔が忘れられないからなんです。

欲しい欲しいと言いながらわかっていたんです。
小学校4年生の私が履くには高価過ぎるパンツ。
そんなワガママを言って困っている祖母の気持ち。
そのパンツを履いても、パリジェンヌにも百恵ちゃんにもなれないことを。
でも、その日は欲しいと上げた拳をおろすことが出来なかったんです。


買ってもらったそのショートパンツは、その日から何年履き続けたでしょう。
放課後に友人と遊ぶ時、お稽古事に行く時、
中学生になっても履いていたことを覚えています。

毎日のように履いていたあのショートパンツ
大人になった気分で、履くたびに嬉しかったけど
祖母のあの時の顔がいつもチクチクと心のどこかに刺さっていて
いまも私の心に残る服となっています。

子供の成長過程で『ワガママ』は一概に悪いものではなく
『自己主張』としてポジティブに捉えられることもある、
以前子育てをしている時に聞いたことがあります。

もし、私のあの日の『ワガママ』をポジティブに捉えるとしたら
自分の気持ちは大切にしつつも
状況や相手の気持ちを考えながら行動すべきものだったなあ、
ということを《チクチク》と、
私が考えるきっかけになった出来事だったと思います。

その後、私は《チクチク》しながらも
エッフェル塔のチャームが付いたショートパンツに
おばさまにお願いして作ってもらったアロハシャツを着て
お出かけする娘になっていくのでした!

あなたの忘れられない服は、どんな想い出が詰まっていますか?

Meg-me